专辑简介

期待の若手、吉田恭子の初の協奏曲録音。ローザンドの愛弟子である彼女が美しい演奏を披露する。共演は、これが録音デビューとなる気鋭の金聖響と、オーケストラ・アンサンブル金沢。

若い演奏家が超有名曲を録音する場合に、完成度を重視しすぎると“優等生的”と評され、感性に頼りすぎると“恣意的で練れていない”と書かれてしまうのが通例だ。これが初の協奏曲録音となる吉田は、メンデルスゾーンの冒頭から豊かな情感を通わせつつ、積極的に自分なりの歌を奏で上げているのが好ましい。師匠のロザンド譲りともいえるあでやかなカラーに彩られた美しい音も印象的だ。第1楽章の第2主題や第2楽章で聴かせてくれる微細な変化を付けた歌い回しも、心からの表情を伴って奏されているのがよく分かる。ただし、名手の録音がゴロゴロしている曲目だけに、メンデルスゾーンの終楽章にしろ、「ツィゴイネルワイゼン」にしろ、至難なパッセージの部分はきっちりと演奏してはいるものの、もう一層の輝きと冴えがあれば、という感想を抱く人もいるだろう。注目の若手・金聖響がオーケストラから引き出している、手応えに満ちたサウンドも聴きものだ。 (満津岡信育) --- 2002年10月号