简介
芥川賞作家としてはじめて名を成したかに見える町田康=町田町蔵、1981年のこのINU唯一のアルバム以来、実はその根本は不変だ。この作品はいわゆる“パンク”じゃない。ジョニーロットンの痙攣(けいれん)歌唱にこそ影響は受けている。しかし、この段階でINUは、欧米のニューウェイヴ勢より高度なテクニックとポップですらある楽曲で、ロック文脈として明文化される以前のごくパーソナル(=普遍的ということだが)な覚醒した諦観や混沌を描き切る。逆さに振っても血の一滴すら出ないほどの容赦なさで。また町田の存在感に隠れがちだが、ギター北田昌宏のジャンルを越境した演奏や構成力は、その後の80年代のP.I.Lやトーキングヘッズ、もっと言えばテクノにすら先んじている。(石角友香)